トラブルの原因
相続が「争族」に!
兄弟姉妹、性格や価値観が異なっていても、親が健在のうちはいがみあったりはしないものです。
しかし、いざ両親ともに亡くなり、相続が発生すると兄弟姉妹の関係が一挙に壊れ、遺産分割でもめるケースが少なくありません。
相続が『争族』に発展します。
トラブルの原因はさまざまですが、相続人の態度や行為が問題となるケースをご紹介します。
一人の相続人が財産を独占
親の事業を引き継ぐ子供が強引に親の財産を独り占めするとか親の介護をしていた子供が財産の大半を要求するといったケースです。
親の事業に対する貢献度や親孝行の度合いが正当化された理由となっていますが、他の兄弟姉妹は黙っていません。
法定相続分を主張し、相続トラブルへと発展します。
相続人の一人が財産の全体像を明かさない
年老いた親の財産を、同居している子供が管理するということはよくありますが、預貯金を不正に引き出したり、隠したりして、相続が発生した時点で遺産の額がはっきりしないケースがあります。
家庭裁判所に調停の申し立てをしても、遺産の額が不特定なため調停の作業が進みません。
まずは、民事裁判にて遺産を確定し、その後に調停となるので時間と費用、そして労力がかかることとなります。
遺産分割の話合い(遺産分割協議)ができない
遺産分割の話合いは「相続人全員の合意」が必要となります。
相続人の中に一人でも分割の話合いに応じない人がいれば分割協議は成立しません。
遺産分割協議書には、「相続人全員の捺印(実印)」と「署名」が必要です。
また、預貯金の引き出しにも相続人全員の捺印(実印)と署名が必要になりますので、遺産分割の話合いに応じない相続人がいれば、
預貯金を引出すこともできません。
通常四十九日を過ぎたころから遺産分割の話合いが行われることが多いですが、相続人同士の話合いができない場合には、家庭裁判所の調停が必要となります。
相続人の中に欲張った主張をする人がいる
口約束では「もしもの時には相続を放棄するから」と言っていても、いざ相続が発生し遺産の額を知るや態度を変え、欲張った主張をする人がいます。
親の面倒を見たことはなく、兄弟に迷惑をかけてきた人に多く、こういう人が相続人にいると遺産分割の話合いがまとまりません。
相続人と遺留分について
遺留分とは
被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には、最低限の遺産をもらえる権利があります。
このように最低限もらえる遺産の一定部分を「遺留分」といいます。
被相続人は、生前贈与や遺言により財産を自由に処分することが出来ますが、この遺留分により財産の処分が制限されることとなります。
遺留分の権利者は
遺留分の権利があるのは次の相続人です。
- 配偶者
- 子・孫及びその世襲者
- 父母・祖父母等の直系尊属
相続財産に対する各相続人の遺留分
(相続人が) 配偶者のみ | 2分の1 | |
(相続人が) 配偶者と子 | 配偶者 | 4分の1 |
子 | 4分の1 (配偶者が死亡している場合は子が2分の1) | |
(相続人が) 配偶者と父母 | 配偶者 | 3分の1 |
父母 | 6分の1 (配偶者が死亡している場合は父母が3分の1) | |
(相続人が) 配偶者と祖父母 | 配偶者 | 2分の1 |
祖父母 | 遺留分なし |
遺留分減殺請求とは
遺留分が侵害された場合、相続人は遺留分減殺請求権を行使して、自分のもらうべき遺産を返すように求めることができます。
この権利を行使するかどうかは相続人の自由となります。
夫がすべての財産(2000万円)を愛人に遺贈した場合、相続人が妻だけだとすると、妻は、遺留分の減殺請求権を行使して、遺産の1/2に相当する金額(1000万円)を愛人に請求することができます。
遺留分を考慮
遺留分は相続人が最低限もらえる遺産の一定部分です。
その遺留分を侵害した遺言書を作成すると、遺留分の減殺請求が行われ、紛争になる可能性があります。
残された遺族が遺産をめぐり争わないためにも、遺留分を考慮した遺言書の作成が必要です。
寄与分
相続の公平性を保つために、
相続人の中に、被相続人に対し特別な働きをした者がいれば、その相続人の相続分には寄与分が加算されます。
寄与が認められるケースとして、
- 被相続人の事業を手伝っていた
- 被相続人の事業に資金を提供し、それにより事業が発展した
- 病気の被相続人の世話をして、看護費用が節約できた
が該当しますが、寄与分は算定が難しく、争いのもとになりがちです。
家庭裁判所の遺産分割調停では、寄与分がよく主張されますが、一般的には、寄与分を取り下げて調停が成立する場合が多いのが現状です。