2011.9.11 遺言書と遺書との違い
■遺言書
- 定められた形式にのっとっており、法的効力がある
- 自分の死後に配偶者や子供が困らないようお金を残したり、
世話になったひとに財産を寄付することができる - 死後に自分の愛情を周りに伝えられる積極的なメッセージとなる
また、
- 法律で定められた様式に従って作成しなければ効力が生じない
- 「公的文書」としての性格がある
- 財産や身分上の相続手続きの根拠書類になる
■遺書
- プライベートなメッセージを伝えられる。法的効力なし
また、
- 形式が決まっておらず、自由に書ける
- きわめて私的な文書で、他人に見せる必要がない
付言事項
遺言書には付言事項というものがあります。
これは遺言書の追記として、自分の気持ちを遺族に伝えるものです。
今まで伝えられなかった家族に対する感謝の想いや、なぜこの遺言書を書いたのか、このように遺産を分割した理由などを記載しておくと、遺族も納得しやすいでしょう。
付言事項は必ず書かなければならないというものではありません。
2011.9.11 死後事務委任契約と遺言書
委任者が受任者に対して、自分の死後の葬儀や埋葬に関する事務、諸届などを委任することを「死後事務委任契約」といいます。
民法の定めにより、委任契約は委任者の死亡によって終了しますが、当事者間で委任契約を「委任者の死亡によっても委任契約を終了させない」旨の
特約を結ぶことによって可能となります。
契約内容を実行するにあたっての注意点や受任者の報酬を遺産の中から
支払うという旨も明記しておく必要があります。
委任の内容を遺言書に記載した場合、民法に規定されている遺言事項でないことは単なる付言とみなされますので、法的に保護されません。
■死後事務委任の内容
- 葬儀、埋葬、納骨、永代供養に関する事務
- 賃貸不動産の明け渡し、敷金・入居一時金等の受領
- 生前に発生した債務(医療費、施設利用賞等)の支払い
- 親族やその他の関係者への連絡
- 家財道具や生活用品の処分に関すること
- 行政官庁等への届出事務
2011.9.11 死因贈与
死因贈与とは
死因贈与とは、贈与者の死亡によって、効力を生ずる贈与です。
いわゆる、「俺が死んだら、お前にやるよ。」というような契約です。
遺言が、遺言者の単独行為であるのに対して、死因贈与は、贈与の一種で、二当事者間の契約です。
また、贈与者の死亡によって効力を生じる点で、遺贈と類似し、民法では、
死因贈与は遺贈に関する規定に従うとされています。
死因贈与の撤回については、遺言の撤回に関する民法の規定のうち、方式に関する部分を除いて死因贈与の場合にも準用されます。
最高裁では「死因贈与は贈与者の死亡によって贈与の効力が生ずるものであるが、かかる贈与者の死後の財産に関する処分については、
遺贈と同様、贈与者の最終意思を尊重し、これによって決するのを相当と
するからである。」と述べています。
つまり、死因贈与契約は契約ではありながら、贈与者が一方的に
撤回することが可能で、また、この撤回が遺言の方式によってなされる必要はないということです。
死因贈与と登記
不動産の死因贈与については、所有権移転請求権保全の仮登記をすることができます。
死因贈与契約書を公正証書で作成し、その中で「贈与者は、贈与物件について受贈者のため所有権移転請求権保全の仮登記をなすものとし、受贈者が
この登記手続を申請することを承諾した。」旨の記載をしておけば、
公正証書の正本又は謄本をもって受贈者がこの仮登記を単独申請ができるので
便利です。
また、死因贈与も遺言と同様に、執行者を選任することができます。
執行者の指定がない場合は、所有権移転の登記手続の際に、贈与者の相続人全員を登記義務者として申請することを要しますので、手続が
煩雑になります。
したがって、この場合は、執行者を指定しておいた方がよいでしょう。
※必ず死因贈与契約を公正証書にしなければならないわけではありませんが、贈与者の死後、受贈者と贈与者の相続人間で摩擦が生じやすいので、公正証書で作成しておく方が安全といえるでしょう。
負担付死因贈与とは
一般に負担付贈与とは、受贈者が対価というには足らない程度の反対給付をする債務を負う贈与です。
たとえば、受贈者は、贈与者の生存中の生活の世話を負担する代わりに、
贈与者の死後に、何がしかの財産の贈与を受ける場合が考えられます。
死因贈与についても、負担付贈与を行うことができます。
上記で、遺言の撤回に関する民法の定めは、方式に関する部分を除いて
死因贈与の場合にも準用される旨記載しましたが、負担付死因贈与については、
受贈者が約定に従い負担の全部又はそれに類する程度の履行をした場合においては、特段の事情がない限り撤回ができないため、注意が必要です。
また、受贈者の立場から見れば、負担付死因贈与契約締結時に、負担の内容を明確にして、それを誠実に実行するならば、遺言よる遺贈でもらうより負担付死因贈与契約の方が確実なのかもしれません。