2010.1.20 納税資金の活用
相続税の納税資金の考慮
相続対策でこれまでよく採用された方法に、無理な借金により、貸しマンションやアパートの建築をして財産評価額を下げるという方法があります。
この方法には一定のリスクが伴うため、納付する相続税額を節税する対策は、あまりやり過ぎないようにすることをお薦めしております。
より現実的な問題として検討しなければならないのが、財産評価額を下げる対策ではなく、きちんと納税資金に換価できる資産、不動産を用意しておくことによる、納税資金準備対策です。
換金性を高めた資産などを生前から準備しておき、相続発生後に直ちに換金することで相続税を納付しようとするものです。
特に換金しにくい不動産等をあらかじめ流動化、つまり換金化しやすいような資産構成に代えておくことが代表的です。
例えば、すぐに売却できるような更地で持っておくこと、そして、その間の活用を検討することなどです。
注意点は、相続税課税時点において、納税義務者(特に奥様などの配偶者)に、換金性の高い資金がきちんと引き継がれるような配慮を遺産分割との兼ね合いで「遺言書」等で記載しておくことです。
資産を残す側としては、困りがちなケースを想定して、最低限やっておかなければならないことがこの遺言書です。
換金性の高い資産といっても、保有している土地取引には時間がかかるケースも多く、しかも譲渡所得税等の発生もあります。
物納する場合も物件自体が物納要件を満たしていることが求められ、更に認可手続に時間がかかります。
しかも、物納認可が下りないといったケースもあり、これは大きなリスクです。
そこで、相続税の納税のための資金準備をしておく必要性が発生するのです。
納税資金が足りない場合の対策は?
短期の対策
納税資金対策として、よくご提案させていただいている方法をご紹介します。
1)銀行から借入する
2)死亡退職金・弔慰金を活用
3)相続資産の売却
4)納税資金の生前贈与
5)延納・物納を利用
ただし、短期的というのは、狙ってそうするのではなく、そうしなければならなかった、ということが大半です。
出来る限り計画的に、長期的な視野で取り組まれることをお薦めします。
長期対策
計画的に取り組めることの代表例が、以下の事項です。
1)生命保険に加入する
2)土地活用により賃貸収入を得る
3)賃貸用不動産を譲渡する
どれも税金と不動産のプロフェッショナルにアドバイスを求めた方が無難な対策です。
信頼できるアドバイザーを探しましょう。
納税資金の過不足分析
必要となる納税資金に対して、相続財産と相続人所有の金融資産(現預金・生命保険金・上場有価証券等)がいくら準備できるかを試算し、相続税を支払う能力があるかチェックしてみましょう。
不足していれば、対策をうつことが必要となります。
一般に、相続税の支払能力の判定は、【納税資金÷相続税×100】で求めます。
この比率が100%よりも小さければ小さいほど対策が必要です。
納税資金の不足を解消する方法
1)節税対策により相続税額を軽減すること
2)納税資金対策により資金を増やすこと
上記、両面からのアプローチが必要です。
納税資金対策では「生命保険」の上手な活用が最も有用です。
終身保険の有期払いで加入すれば、確実に死亡保険金を相続税の納税資金に充当できます。
支払保険料は相続税の分割前払いと考えることもできます。
これにより、所有土地等を譲渡または物納することなく、相続税の納税を完結させることもできます。
生命保険などによる対策
正味財産額が3億円以下で、生命保険加入が可能な年齢と健康状態であれば、生命保険の加入だけで相続対策は十分といえます。
大きな節税効果は期待できませんが、少ない保険料負担で必要な相続税の納税資金を準備できれば「小さなコストとリスク」で「大きな効果」を上げることができます。
すなわち、相続財産を無傷で残すために生命保険金を活用し、死亡保険金で相続税をカバーすればよいのです。
相続税の納税資金を生命保険だけで準備することは理論的には可能ですが、被保険者の年齢が高いことからも保険料も相当な金額になります。
保険料負担に耐え得る限度という視点から判定しても、課税価格が「3億円」以下の場合に生命保険だけで納税資金の準備が可能と考えられます。
2010.1.20 財産管理契約
財産管理契約とは、自分の財産の管理や、その他の事務処理について代理権を
与える契約です。
成年後見制度は本人の判断能力が不十分にならなければスタートしません。
判断能力がしっかりしていても、病気で寝たきりになったり、後遺症で体が不自由になったりして外出するのが難しく、自分で銀行に行ってお金を
おろしたりすることが困難になることも多く見られ、その場合に代理人として事務処理を行います。
財産管理契約は民法上の委任契約で、成年後見制度のような家庭裁判所による公的な保護制度がありません。
自分の大切な財産が悪用されたり、横領されるおそれもありますので、慎重に受任者を選ぶ必要があります。
この契約は、当事者はいつでも解除することができます。
■財産管理契約の内容(一例)
- 預貯金の出し入れや、公共料金等の支払い等日常生活に必要な資金の出しいれ
- 高齢者や社会的弱者を狙った詐欺から守ってもらうための相談
- 不動産の賃料の支払いや受領
成年後見制度活用のポイント
(1)任意後見人の選任は慎重に。本当に信頼できる人に依頼する
(2)家庭裁判所が任意後見監督人を選任してから後見が開始される
(3)判断能力がない場合は任意後見ではなく、法定後見制度を活用する
2010.1.20 動産の名義変更
死亡保険金の請求
受取人が請求してはじめて受け取ることができます
まずは、亡くなった人がどのような生命保険に加入していて、
受取人は誰なのかを確認しましょう。
念のために家族全員の保険証券をだし、見落としが無いように確認しましょう。
一般的に保険と呼ばれるものには、生命保険、損害保険、簡易保険、共済、勤務先の団体保険などがあります。
団体保険は、勤務先で本人が知らないうちに加入して受取人が勤務先になり、死亡退職金などで支払うために加入しているケースもあるので、勤務先に確認してみましょう。
保険請求手続きでは、保険証券を手元に置いて、被保険者名、死亡日、証券番号などを伝えるとスムーズに進みます。
送ってもらった書類に必要事項を記入し、必要書類を送付すると、およそ1週間ほどで指定口座に振り込まれます。
死亡保険金は、請求期限が2年もしくは3年以内となっている保険会社がほとんどですので、早めに請求手続きをしましょう。
また、保険金が受け取れるかどうかは保険の種類、特約の種類などによりますので、早めに保険会社、代理店に連絡しましょう。
参考までに、「生命保険の死亡保険金」は、受取人が特定されている場合、受取人の「固有の財産」とみなされますので、遺産分割における「相続財産」に含みません。
死亡保険金の受け取り手続
1)保険金受取人が保険会社(代理店)へ連絡
2)生命保険会社から必要書類等が送付
3)保険金受取人が必要事項を記入し、必要書類等を提出
4)生命保険会社による支払い可否判断
5)保険金の指定口座への振込
死亡保険金が受け取れない場合
・保険会社が定めた期間内の自殺
・契約者、死亡保険金受取人が故意に被保険者を死亡させた時
・戦争その他の変乱による死亡
死亡保険金受け取りのための必要書類
・保険金請求書(保険会社所定の物)
・険証券
・死亡診断書
・故人の戸籍謄本
・保険金受取人の印鑑証明書
・保険金受取人の戸籍謄本
※必要書類は各保険会社、または保険の内容によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
銀行口座の解約
銀行が相続の発生を確認すると、すべての口座は凍結します。
亡くなった方名義の預貯金は、銀行などの金融機関が相続の発生を確認すると、すべての口座が凍結され、払い戻しができません。
凍結された預貯金の払い戻しは、遺産分割が行われる前か、後かによって必要書類が異なります。
おおよその手続は以下のとおりですが、金融機関によって必要な書類等は異なりますので、それぞれの金融機関に直接お問い合わせください。
(1) 遺産分割が行われる前の場合
1)所定の払戻し請求書(相続人全員の署名・実印による捺印がされたもの)
2)被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
3)相続人全員の印鑑証明書
4)各相続人の現在の戸籍謄本
金融機関によって必要な書類等は異なりますので、それぞれの金融機関に
直接お問い合わせください。
(2)遺産分割が行われた後の場合
遺産分割協議に基づく場合、調停・審判に基づく場合、遺言書に基づく場合によって必要な書類が異なります。
遺産分割協議に基づく場合
1)所定の払戻し請求書(申立人の署名・実印による押印がされたもの)
2)被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
3)相続人全員の印鑑証明書
4)各相続人の現在の戸籍謄本
5)被相続人の預金通帳と届出印
6)遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印)
金融機関によって必要な書類等は異なりますので、それぞれの金融機関に直接お問い合わせください。
調停・審判に基づく場合
1)家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本
(いずれも家庭裁判所で発行を受けることができます)
2)預金を相続した人の戸籍謄本と印鑑証明書
3)被相続人の預金通帳と届出印
金融機関によって必要な書類等は異なりますので、それぞれの金融機関に直接お問い合わせください。
遺言書に基づく場合
1)遺言書(自筆証書遺言の場合は検認の手続きをうけたもの)
2)被相続人の除籍謄本(最後の本籍の市区町村役場で取得できます。)
3)遺言執行者の印鑑証明書
4)被相続人の預金通帳と届出印
金融機関によって必要な書類等は異なりますので、それぞれの金融機関に直接お問い合わせください。
株券の名義変更
株式の名義変更は上場株式、非上場株式によって手続が異なります。
上場株式の名義変更
上場株式は、証券会社と株式を発行した株式会社の両方で手続をすることになります。
・証券会社における手続
証券会社は顧客ごとに取引口座を開設していますので、まずは取引口座の開設が必要となります。
被相続人の取引口座を相続する相続人は、以下の書類を証券会社に提出して名義変更しましょう。
1)取引口座引き継ぎの念書
2)相続人全員の同意書(証券会社所定の様式)
3)相続人全員の印鑑証明書
4)被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
5)相続人の戸籍謄本
・株式を発行した株式会社における手続
証券会社での取引口座の名義変更手続が終了後、株式を発行した株式会社の株主名簿の名義変更手続をすることになります。
この手続は証券会社が代行して手配してくれます。
非上場株式の名義変更手続き
発行会社によって行う手続が変わります。
発行した株式会社に直接お問い合わせください。
遺族年金
遺族は年金を受け取ることができる
遺族は、亡くなった方が加入していた年金の種類に応じて、「年金受給権を引き継ぐ」という形で、「遺族年金」を受け取ることができます。
あくまで遺族の生活保障ですので、受け取るには一定の要件があります。
しかしその一方、小さな子や高齢者は、一家の大黒柱を突然失ったとしても困らないようになっています。
また、本人が老齢年金や障害年金を受給する事となった場合には、支給停止や、制限を受けることがあります(1人1年金の原則)。
併給の場合には、遺族自身の選択によって、より有利なものを選ぶことができるようになっています。
遺族年金の支給対象者と給付の種類を表にまとめてみました。
種類 | 基本対象 | 給付種類 |
国民年金 | 子(18歳未満)がいる妻 | 遺族基礎年金 |
子がいない妻 | 死亡一時金または寡婦年金 | |
厚生年金 | 子(18歳未満)がいる妻 | 遺族基礎年金、遺族厚生年金 |
子がいない妻(40歳未満) | 遺族厚生年金 | |
子がいない妻(40歳~65歳) | 遺族厚生年金、中高齢寡婦加算 |
遺族基礎年金
国民年金の被保険者であった夫が亡くなった時、「子がいる妻に」を受け取ることができます。
妻の年収制限(年収850万円未満)や子供の年齢制限(18歳に達する日以後の最初の3月31日まで)など支給を受けるための要件があります。
年金額は、786,500円+子の加算額(平成24年度)
子の加算: | 第1子、第2子 各226,300円 |
第3子 各75,400円 |
寡婦年金
国民年金からの支給です。
国民年金の被保険者であった夫が、国民年金に25年以上加入し、老齢基礎年金を受けることなく死亡した場合に、「子がいない妻」(65歳未満)に支給されます。
65歳からは妻自身の老齢基礎年金が支給されますので、寡婦年金は支給されません。
死亡した夫が受け取るはずの老齢基礎年金額の4分の3に相当する額を受け取ることができます。
死亡一時金
国民年金からの支給です。
国民年金の被保険者であった夫(妻)が、国民年金保険料を3年以上納め、年金を受け取ることなく死亡した場合に、遺族に支給されます。
遺族の範囲は、生計を同じくしていた、配偶者 – 子 – 父母 – 孫 – 祖父母 – 兄弟姉妹のなかで、先順位のものに支給されます。
寡婦年金を受けることができない場合に死亡一時金として12万から32万円がもらえます。
遺族厚生年金
厚生年金保険からの支給です。
厚生年金保険の被保険者又は被保険者だった者が死亡したときに、その遺族に支給されます。
遺族の範囲は、死亡した者によって、生計を維持されていた、配偶者子 – 父母 – 孫 – 祖父母で、先順位のものに支給されます。
死亡した者の老齢厚生年金の額の4分の3に相当する額を受け取ることができます。